【ARKの女帝】Chapter 1:泥沼からの国勢調査(アセット・マネジメント)

『ARKの女帝』

【プロローグからの続き】
鏡の中の自分との対話を終え、私はふと、部屋の空気の淀みに気づく。 埃っぽいカーテン、くすんだ床、そして何より……私の腹の虫が鳴いている現実。

「まずは腹ごしらえね。戦(いくさ)をするにもエネルギーがいるわ」

そう思った矢先、控えめなノックと共に現れたのが、彼女だった。

【メイド・リナとの遭遇】
「お、お嬢様……お目覚めですか……?」

入ってきたのは、今にも倒れそうなほど痩せたメイド。名前は確か、リナ。 彼女が震える手で差し出したトレイを見て、私は絶句した。 冷めきった泥水のようなスープ。石のように硬いパン。

(……ジェミ、分析を) 『対象:食事。栄養価、ほぼゼロ。味、推定マイナス。これを摂取することは、女帝の尊厳に関わります』

私は無言でトレイをサイドテーブルに置いた。カチャン、という音が部屋に響き、リナがビクリと肩を震わせる。

「リナ」 「は、はいぃっ!」 「この屋敷の『管理責任者』は誰?」 「え……? あ、あの、旦那様は出奔されまして、今は……」

【現状(B/S)の把握】
話を聞けば聞くほど、状況は悲惨だった。 金庫は空。使用人は逃げ出し、残ったのはこのリナ一人。 そして屋敷のいたるところに、前の主人が残した「負の遺産(ガラクタ)」が溢れかえっているという。

普通なら絶望して泣き崩れる場面かもしれない。 けれど、私はこみ上げてくる笑いを抑えきれなかった。

「……ふふっ。最高じゃない」

ゼロどころかマイナス。 余計なものが溢れ、気の流れが滞り、富が逃げていく構造。 つまり、「編集(手直し)」しがいがあるということよ。

【空間執刀(オペ)の開始宣言】
私は立ち上がり、窓のカーテンを力任せに引きちぎった(古くてボロボロだったから、簡単に破れた)。 一気に差し込む陽の光に、リナが目を細める。

「リナ、聞きなさい。今日から私がルールよ」

私は彼女に、最初の命令(オーダー)を下す。

「まずは『空間』の執刀から始めるわ。 この部屋にあるゴミ、ガラクタ、私の美意識に反するもの……全て中庭に放り出しなさい。 徹底的な断捨離(パージ)よ。埃ひとつ、邪気ひとつ残すんじゃないわ」

「え、えええ!? で、でも……!」 「口を動かす前に手を動かす! さあ、ARK(箱舟)の出航準備よ!」

【読者へ】
手元には、錆びついた鍵束と、真っ赤な数字が並ぶ帳簿。 さて、まずはどこからメスを入れようか。

私の「空間鍼灸」の腕が鳴る。 この淀んだ屋敷を、黄金を生むパワースポットに変えるまで…… 私の休息はない。

(続く)


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