[戦場と化した部屋]
「そこの本棚、右に3センチずらして!」 「ひぃぃっ! お、重いですぅ……!」
屋敷中に、リナの悲鳴と私の怒号が響き渡る。 埃が舞い、ガラクタが山と積み上げられていく。
普通の人には「大掃除」に見えるだろう。 でも、私の目には違って見えている。 これは**「外科手術(オペ)」**だ。
【家を「診る」】
私は部屋の中央で目を閉じ、意識を研ぎ澄ます。 (ジェミ、この屋敷の「経絡(けいらく)」をスキャンして)
『了解。北東の「鬼門」にあたる位置に、腐敗した木製家具(箪笥)を確認。 これが気の流れを塞ぐ「血栓」となっています。屋敷全体の運気が窒息状態です』
やっぱりね。 入った瞬間に感じた息苦しさは、これだったのよ。 この屋敷は今、重度の「循環不全」を起こしている。
「リナ! その腐ったタンス、今すぐ窓から放り投げなさい!」 「えええ!? これ、旦那様のお気に入りじゃ……」 「死にたいの? それとも生きたいの? どっち!」 「い、生きたいですぅぅーーっ!!」
ドガァァン!! リナが火事場の馬鹿力を発揮し、巨大なタンスが庭へと落下した。
【風が通る(治療の完了)】
その瞬間だった。 ヒュオォォォ……と、どこからか風が吹き抜けた。
今まで淀んでいた空気が、急に軽くなる。 まるで、詰まっていた血管に血が巡り始めたように、屋敷が「呼吸」を始めたのだ。
「はぁ、はぁ……お、お嬢様……なんか、部屋が明るくなった気が……」 リナが汗だくでへたり込む。
「当たり前よ。今、この部屋の『ツボ』に鍼を打ったのと同じ状態にしたんだから」
私は満足げに頷く。 空間が変われば、思考が変わる。思考が変われば、運命が変わる。 これが私の**「空間鍼灸」**。
【次なる敵】
空間は整った。 舞台(ステージ)はクリアになった。
私は汗を拭い、リナに向かって手を差し出す。
「さて、環境は整ったわ。 リナ、次は『数字』よ。 隠している金庫の鍵と、帳簿を出しなさい。 このARK(箱舟)に残された燃料(資金)がいくらか……現実を見る時間よ」
(続く)

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